Kevin's B-6

東大に0.1点差で落ちて悩んだ挙句後期から仮面浪人していた。何年か後にコイツこんな事思ってたのかwwwという楽しみのために書いている。

ウケ容れる

 人間知っているものを好きになるらしい。

 

キュンです

 

「知っている」が「好き」の前提にあって、「全く知らないジャンルだけどなんか好き」という事は基本的に無いらしい。確かに歴代の恋人は初恋の人に似た人ばかりなんて話はよく聞く。

知識が好みに先行するという話は自分の身にも覚えがあることで、例えば、昔聴いた時にはハマらなかった音楽を数年後聴き直すと急に名曲に感じるという経験が多くある。大抵ハマる曲は昔どこかで一度は聞いたことのある曲だったり、それに似たメロディーをしていて、ちょっぴりだけ許容できる程度の新鮮さが加わっているように思う。音楽には全く明るくないが、日本でヒットする曲は殆どメロディーラインの型が決まっているらしい。

一般的に「新しく好きになる何か」は、現在好きなものと何かしらの関わりがあり、好きになる前からある程度の知識や馴染みを得ているものが殆どだそうだ。例えば、子供の頃親に連れられてよくサッカー観戦に行っていた経験から、サッカーのルールやどのようなプレーが良いプレーなのか理解するようになり、サッカー観戦を好きになる、といった具合だ。

全く何の馴染みもないものを好きになれるほど人間は新しいものに寛容ではないのかもしれない。

 

となると、自分の好きなものは、過去の好きだったものや身近な人の好きなものの集合体から派生したものとして構築されているということになる。

昔聴いてハマらなかった曲に数年後ハマるという経験をするたびに、どうしてその良さをその時に感じられなかったのかと自分の感受性にがっかりしてきたが、単にその対象についての知識が無さ過ぎただけかもしれない。

 

 

先日、2023年のM-1グランプリの決勝があった。それまでの人生ではそこまでお笑いに馴染みがあったわけではなく、リアルタイムで最初から最後まで見たのは今年が初めてだった。漫才よりコントの方が好きで、数年前までは、テレビを付けたらちょうどM-1をやっていて数ネタ見たが、あまり面白いと思えず、チャンネルを変えてしまったくらいのレベルである。

 

 

浪人時の死にそうな時に、サンドウィッチマンのコントで物心ついてから初めてお笑い芸人で笑い、それ以来色んな芸人のネタを見て、自分が「面白い」と思うものの幅が広がった気がする。劇場に行ったりするほど熱心なファンでは全然ないので皆目見当違いかもしれないが、今年の決勝戦を見ていて、ウケる、すなわち観客に面白いと受け入れられるかどうかは、「その漫才師のことを知っているか」と「今まで観客が見てきたネタやお笑いの蓄積の中にその漫才師がやったネタと地続きの種類のネタがあるか」に依るように感じた。いわゆる万人受けするとか玄人向けみたいなのは後者の蓄積の範囲の差に依るものだと思う。最近よくある「ずっと意味の分からないけどなんか世界観があって面白いネタ」もそういうジャンルがあると認識してみている人と知らない人とでは楽しめるかどうかのハードルがだいぶ異なる気がする。

 

ちょっと何言ってるか分からない

 

自分が面白いと感じたものに置き換えて考えても、上記の基準は概ねあてはまっていた。決勝戦ネタの中では、(あまり詳しく知らなかったのに)ヤーレンズの一本目が一番面白いように感じたが、多分サンドウィッチマンのスタイルとどこか似ている面があったからだという風に思う。雛は最初に見た存在を親だと思うなんて言うが、お笑いとして最初に見たサンドウィッチマンのスタイルが自分にとっての「面白い」の軸としてあり、そこと重なる部分が多かったので、自分にとって飲み込みやすく感じた結果、面白いと感じたんじゃないかと思う。富澤さんが変なピザの配達員としてテンポよくぼけていく様が、楢原さんの変な大家さんのぼけ方に重なって面白いと感じた気がする。昔から言葉遊びや文字る系のユーモアが好きなので真空ジェシカのネタも普段より分かりやすくて面白かった(美容院のコントみたいな伏線回収系の方が本領発揮感あって好きだけど)

また、歌ネタ等はそんなに馴染みが無かったのでこんな方向性もあるんだ、という組が複数あって、これをきっかけに自分の「面白い」と思える漫才の範囲が広がると思うと楽しみではある。

 

 

散々知識が好みに先行するという話を長々してきて恐縮だが、そんなことは前々から薄々気づいてはいて、その上でそれでもなお知識など関係なく言語化不可能な遺伝子レベルで好きだと思える存在があるのではないかと信じてそれを探しながら生きてきた気がする。だから、そんな存在ではないかと思える瞬間を迎えるとテンションが上がる。例えば初見でビビッと来る曲を見つけた時。大抵の曲は初見ではハマらないが、極稀にそういう時がある。全く知らなかった曲調を何故か好きになる瞬間。

例えば、FripSideonly my railgun』、サカナクション『ミュージック』、Akeboshi『Wind』、星野源『夢の外へ』、Yunomi、nicamoq『インドア系ならトラックメイカー』、Supercell拍手喝采歌合』、日食なつこ『水流のロック』etc...(有名な邦楽で好きなものは街中で一回は聞いた事があるものが多いので少なめ)

 

Cultivate your hunger, before you idealize

 

知識が好みに先行する理論で言えば、もしかしたらこれらの曲も自分で勝手に当時の自分にとって「新しいけど無条件で受け入れざるを得ないほど良い」と感じていただけで、無意識下ではそれまでの「良い音楽」の蓄積の延長線上でしかなかったのかもしれない。「なんだこの新しさは!」と思うものもその新しさを無条件に拒絶しないことができる程度の新しさかもしれない。

 

遺伝子レベルで過去の経験や知識の蓄積など一切関係なくどんな世界線を辿ってきたとしても好きなものや人など存在しないのかもしれない。

まず当面は「好き」だと思える範囲を広げるために色んなことを知る行為を続けようと思う。ノーマルプレイしか受け付けないよりもアブノーマルなプレイも楽しめる方が人生楽しそうだ。

そして、いつの日か、それまで広げてきた「好き」を一瞬で全て消し飛ばす、それ以前の「好き」の概念を覆すような圧倒的な「好き」的存在に出会える日を願って生きる。